第1章 心の兵団

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 *** 「ジローっ!!起きて起きて、朝の『核脳』回収の時間だっ!」  甲高い声で僕を叩き起こしたのは、銀色の長髪をオールバックで結んでいる……幼さが残る少年。俺と同じ五十年生きてるが、まるで見た目が(『もの』は皆そうなのだが)変わらない可愛い奴だ。しかし、顔と戦闘力が不釣り合いな奴の代表みたいなやつで、油断ならない。 「あぁ…………可愛い、可愛いよ、ケイジ。一緒に寝ようよ」俺は、わざと恍惚とした表情と声を出した。 「起きろってんだよこのキチガイ野郎がっ!」ケイジが布団を引っぺがす。 「君が寝るまで僕は安心して起きられない」 「訳がわからないのだけど怖いぞ!?」  僕は、瞬発的に飛び起き、彼の胴にもたれて抱きしめる。もちろん、マジでは無くおふざけである……が、誰も理解してくれないのが現状である。『もの』としての異常者は、性格も異常……というレッテルを貼られているようで……まぁ、本当のことだが。 「きっ、気持ち悪っ!!」 「そもそも、君がいけないんだよ?まだ正の力も回復してないんだよ?そして僕はとてもいい夢をさっきまでみてたんだよ?ちょっとくらい仕返ししても……いいよね?いいよね!?」 「くっ、離せこの変態が!起こさなくちゃいけなかったんだよ────待ておい待て、何どさくさに紛れて俺のズボン下ろそうとしてんの!?」 「何と無く」 「せいっ!」ケイジは僕の手を自分の体から引き剥がして、その顎に膝蹴りを見舞った。この世界には痛みは無いが、衝撃で僕はひっくり返った。 「おう、ふられちゃったぜ」 「いいから、浄化された『核脳コア』の回収だ。昨日死にかけて疲れてるのは知ってるけどさ、早く行かねえと後でめんどくさいって」白いズボンを直しながら、ケイジは白いシャツの上に白いコートを……白づくめのファッションの王子様は、更にその小さな背に不釣り合いな大きな剣を背負うと、「先に行って待ってる」と少し笑って一言残して、先に部屋から出て行ってしまった。天使か。
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