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自分のサンダルが立てる音さえ耳にまとわりつく。
強烈な陽射しがアスファルトを灼く匂い。
首筋を、背中を、絶え間なく汗がつたう。
必要以上に敏感な五感は、コダマにひとときの安らぎも与えない。
夏休みの解放感も、いつまで続くかわからない暑さに塗りつぶされそうだ。
コダマは、古い我が家のひんやりとした玄関に足を踏み入れた。
祖母のサクが水浴びをしているのだろう。
微かな水が弾ける音を聞きながら、ようやく深く息を吐き出した。
「ばあちゃん、サクばあちゃん?」
コダマの呼ぶ声に、サクが風呂場から応えた。
「おやつは戸棚にあるよ。ああ、コロッケは食べちゃダメだ、それは夕飯だからね」
うっかり手に取ってしまったコロッケの一つを、コダマは既に胃に収めていた。
ついでに腹持ちの良さそうな和菓子を一つ二つと頬張る。
汗ばんだシャツを着替えようと脱衣所へと向かった。
サクはコダマには甘いが、だらしなく散らかすのを嫌う。
洗濯機の蓋を持ち上げようとして、こだまは何かに気づいた。
赤くて縞のある、丸い艶やかな小さい石。
サクがいつも身につけている首飾りが、棚に置いてある。
『サクばあちゃん、それ、コダマにちょうだい』
『いつかはやるよ、でも今じゃない。これに触ってはいけないよ』
そんなやりとりをしたのはいつだったろう。
コダマは人の物を欲しがる子どもではなかったが、この首飾りにだけは何故か惹きつけられたものだ。
「ちょっとだけならいいよね」
自分に言い聞かせ、首飾りに手を伸ばした。
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