第1章

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「ペロちゃんの容態があまりよくありません。 今日医者見せたら、明日かもしれないし、 1週間後かもしれない。 とにかく覚悟はしてくれと言われました」 そんなメールが来たのは金曜の朝だった。 いつものようにトーストをかじりながら 何の気なしに見たメールに小川歩は激しく動揺し すぐに実家の父親に電話をかける。 「もしもし」 「今、話せる?」 「ちょっとならいいよ」 「ペロちゃんのことなんだけど、なによあれ、 どういうこと?」 「1週間くらい前からご飯を食べなくなって 全然元気がないから峰先生のところへ 連れて行ったんだ。そうしたらああ言われた」 「死ぬってこと?」 涙を拭って歩は父親に尋ねる。 「落ち着きなさい。まだそうと決まってるわけじゃないよ」 「でも明日かもしれないって!」 涙があとからあとから出てくる。 「だから、落ち着きなさい、歩」 「私そっちに夜帰るから!」 「ペロも喜ぶよ。じゃ切るよ」 「うん・・・ペロちゃん、大丈夫だよね?」 「覚悟はしておきなさい、歩」 静かに父はそう言い、 私は携帯電話を切る。 午後5時半の特急で帰れば7時半には家には着く。 職場まで持って行くのは大変だけど、 背に腹は変えられない。 緊急事態だ。 歩は急いで下着やスマートフォンの充電器を 小さなボストンバッグに入れる。
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