夏の終わり

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腹に響く花火の音。 辺りはすっかり暗くなっていた。 提灯の赤い灯、空は黄色や緑の火炎が景色を彩る。 賢介は一つ溜息をついた。 石段を登り、横を通り過ぎる安物の浴衣姿があった。 誰だ?と顔を見ようと見上げようとすると、首筋がキンと冷たく硬いものに触れた。 キンキンに冷えたラムネの瓶だった。 飲む? と言ったのは、早苗だった。 ラムネを手渡すと、賢介の隣に腰かけ、ビー玉を落として飲み始めた。 汗の滲む喉が脈打つ。 髪を掻き上げる早苗に、賢介はどもった声で礼を言った。 石段の下の方で大声が上がった。 賢介はそれを見てぎょっとした。早苗をちらっと見てから石段の下を再び見た。 賢介は赤面した。早苗は笑った。 野球部の連中が石段を駆け上がる。 二尺玉が夜空を切り裂いて上がっていくのが見えた。 赤い大輪が彼らの青春を明るく染めた。
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