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賢介はもちろん緊張していたが、マウンドに駆け寄ったキャッチャーの矢矧に勇気を与えられた。
ただ一言、思い切って投げろ、と言っただけだが、同学年の女房役の目は賢介に信頼を寄せていた。
賢介にはそれだけで十分だったのだ。
3対5、一死一三塁とピンチは変わらない。
だが賢介には武器があった。
最速140キロの直球である。
県内でも一目置かれるこの直球は、まさしく秘密兵器であった。
初球、ストレートが外角いっぱいに決まった。
一球で歓声が上がった。
これが、エースの景色か。
矢矧のサインに大きく首を縦に振った。
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