夏の終わり

7/12
前へ
/12ページ
次へ
賢介はもちろん緊張していたが、マウンドに駆け寄ったキャッチャーの矢矧に勇気を与えられた。 ただ一言、思い切って投げろ、と言っただけだが、同学年の女房役の目は賢介に信頼を寄せていた。 賢介にはそれだけで十分だったのだ。 3対5、一死一三塁とピンチは変わらない。 だが賢介には武器があった。 最速140キロの直球である。 県内でも一目置かれるこの直球は、まさしく秘密兵器であった。 初球、ストレートが外角いっぱいに決まった。 一球で歓声が上がった。 これが、エースの景色か。 矢矧のサインに大きく首を縦に振った。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加