夏の終わり

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初球、高めに浮いた球はボール。 落ち着き直して投げた二球目外角直球は見逃し。 三球目のスライダーがすっぽ抜け冷や汗をかいたが、頭上を超えようという球を矢矧が上手く捕ってくれたおかげで難を逃れた。 矢矧のサインに頷き放った四球目、外角の直球を重田は振り遅れる。 カウント2-2。追い込んだ。 ロジンを手になじませ、大きく息を吐いた。 打席の重田はヘルメットをいじり、バットを握り直した。 ルーチンを終えた重田には、焦りは見当たらない。 県内屈指の打者を目の前にして、賢介に恐れは無かった。 鍔迫り合いのような緊張感が漂っていた。 矢矧のサインは、直球。 当然、返事はOKだった。 セットポジションで静止する。 指に触れるボールの縫い目の感触が、はっきりと伝わってくる。
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