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「俺は性処理としてお前を抱くんじゃなくて、愛してるから抱きたいんだ」
「..え?」
「愛してる者に触れたいと思うのは、普通のことだろう?一緒に暮らしたいと思っては駄目か?これ以上、人を殺して欲しくないと思っては駄目なのか?」
「ま、待って!王様、自分がなにを言ってるか分かってるの!?」
「ユサを愛してる」
ぱくぱくと、鯉のように口が開閉した。
「おれ..王様を殺そうとしたんだよ?忘れちゃった?」
「あの時のユサはとても美しかった」
あの、煌めく琥珀の美しさを忘れることなど一生ないだろう。
「だ、め。ダメダメダメ!俺は駄目!」
「何故だ」
「俺穢れてるから..汚いから」
「それはお互い様というものだ」
この王という地位につくまでに、どれだけ人を殺め、兄弟を蹴落としてきただろうか。
自らが手を汚すことはなかったが、自分の指示で、命令で、人を動かしてきた。
「お前が気にすることはなにもない。俺がちゃんとこの国を管理していれば、暗殺を依頼する奴なんて出なかったはずだ。小さな子供が、スリを働かなくて済んだんだ。悪いのは俺だ。サシャが気にすることは、なにもないんだ」
「そんなこと、言わないでよ..」
知ってるよ。
王様が、俺たちみたいな子供を、出さないように頑張ってくれてるの。
悪いのは、そんな王様の頑張りを馬鹿にする貴族だってこと。
自らの懐を肥やすことしか考えてない、下種どもがいけないんだって、俺は知ってるよ。
そんな王様を、俺は―――
「王様にね、言ってないことがあったんだ」
王様は、自分を殺すよう依頼したのが誰なのか聞かなかったから。
俺のなけなしのプライドを守ろうとしてくれたんだよね。
「王様をね、暗殺しにきたのは俺の意思なの。誰にも依頼なんてされてないよ」
「そ、れは..」
「俺に弟がいるってのは知ってるよね?その弟がね、王様にそっくりなの」
全部。
「王様を殺そうとしたんだけどね、やっぱり弟にそっくりだから」
その一瞬の隙にやられちゃったわけだけど。
「王様を本当に偶然、仕事帰りにみたんだ。その時、思ったんだよね。コイツを殺れば、弟は楽になれるんじゃないかって」
一卵性か、二卵性か。
体の弱い弟を、助けられるって思ったんだ。
俺の稼ぐお金だけじゃ、高価な薬はそんなに買うことができないから。
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