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王様はしばらく黙ったあと、ぽつり、と話し出した。
「その悪習を、俺の代で終わらせればいい」
「できないよ」
王様は少し俺を睨んだ。
王様が無能っていいたいんじゃなくて。
「だってさ、いつからしてると思ってるの?俺らが生まれるずっとずっとずーっと前だよ?もはや伝統になっちゃってるわけじゃん。..無理だよ」
「俺を誰だと思ってるんだ」
「え、..王様だけど」
「そうだ。王様だ。そして俺は歴代王たちのなかでも賢君だと謳われてる」
何てことのないように平然という王様をみて、この人ならもしかしたらって、そう思っちゃう。
「王様」
だから
俺は言ったんだ
「もし悪習をなくしてね、俺の弟みたいな存在がなくなるならね」
暗殺から足を洗って、王様とずっとずっと一緒に、暮らしたいって。
緊張で少し声が掠れて小さくなっちゃったけど、王様はちゃんと聞き取ってくれた。
「本当だな。二言はないぞ」
俺の目を真剣にみる王様。
「うん。俺、嘘は..ついたことあるけど、王様の神様に誓ったっていいよ」
そういうと、王様は俺を強く抱きしめた。
俺と違ってたくましい王様にそうされると少し苦しいんだけど、なんだか胸がほっこりして。
自然と頬が緩んだ。
「約束だユサ。俺は悪習をなくし、世界一平和な国にしてみせる。誰一人子供が傷つかなくてすむ国に」
「..うん」
できないよ、なんて今度は言えなかった。
ここでハードルをあげちゃう王様は、格好良くて。
「...惚れちゃうでしょ、ばか」
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