蛇の様な後輩【完】

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蛇の様な後輩【完】

俺は絶賛コクられ中である。 「…ずっと、ずっと先輩のことが好きでした…付き合ってくれませんか?」 目がぱっちりしたボンキュッキュの子が相手ならいい。 髪が黒くて、清楚な子ならなおいい。 それなら俺だって断りはしないさ。 「すまないが諦めてくれ」 だか、 現実はそう甘くないらしい。 「どうしてですか!!」 声をあらげた後輩をみやる。 黒い髪は合格だが、 身長は俺よりはるかに高い。 俺だってそれなりに高い方なのに。 そして、なによりボンキュッキュのボンの字がない。 モテるだろう。 ………女性に。 「…社内恋愛はしないと決めている」 それに… そう、 お前、『男』じゃないか。 そう、言おうとした。 したんだが、 その言葉は、後輩のナニで塞がれて言えなかった。 ナニでって… …………後輩の唇でだよ。 「んっ…」 「好き何です!声をかけて頂いたあの時から!」 「…ま、て……ちょ、坂倉!」 体をまさぐってきた後輩…坂倉の手を押さえる。 まて、まてまてまてよ、おい。 何だこの状況は。 「仕事も出来て、スタイルも顔も良くて、頼りになって、周りからの信頼も厚くて、俺なんか全く釣り合わないって!不相応だって分かってるんです!…でも!でも、…俺、もう先輩の事しか考えられなくて!!」 「坂倉……」 切なそうに伏せられる目。 戦慄く唇。 薄くて形のよいそれは、けれどやはり男のモノで。 「昨日夢に先輩が出てきてくれたんです!夢に出てくる人は、自分の事を想ってるからだって聞いて…だから、俺…。そんなはずないのに……」 嫌わないで欲しいと、小さく呟かれてしまっては。 「…」 潤むその瞳をみせられては、俺はもう何も言えなかった。 もともと坂倉のことは特別弟の様に可愛がっていたのだ。 いくら告白されたとしても、唇を奪われたとしても、嫌いになれるはずかない。 「先輩…今すぐにお返事を、とは言いません」 「ああ…」 「俺みたいな男に告白されて、気持ち悪いですよね。…本当に、すみません」 俺みたいな、というが、坂倉はみたいな、という言葉から遠く離れた人間だ。 サラサラの黒髪に、くっきりとした二重、薄い唇にすっと通った鼻梁は、男の俺から見てもとても魅力的に思う。
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