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唯
妻の唯と出会ったのは、6年前の春に参加した友人達との花見で出会った。
当時、どちらかと言うとモテていた僕は女性関係も割と派手で友人からも遊び人などとよくからかわれていた。
特定の女性と付き合っているよりも、お互い詮索せず干渉しない関係の女性が常に2・3人いるといった状態を続けていた。
人は例外なく裏切る生き物である。
当時の僕は男性・女性に関わらず本気でそう思いながら人と接していた。
その為、親友と呼べる人間は一人もいなかた。
その日も友人達から頼まれていたので女性何人かを手配し花見に参加していた。
友人達からすれば、女性と知り合うには僕を利用すればいいのだから。
花見の席で皆が酒に酔いはじめ面倒くさくなり、席を離れ一人で煙草を吸いながらぶらぶらしていた。
しばらく歩いていると、ベンチに座り寂しげに桜を見つめている女性が見えた。
よく見ると、隣で花見をしていたグループの一人で後に僕の妻になる唯だった。
実は隣のグループの幹事の男が僕の友人であり、後に一緒に会社を立ち上げる事になる相手だった。
あまりに寂しそうに桜を見つめている唯の姿が妙に美しく感じ、思わず声を掛けた。
「一人でどうしたん??」
唯は少し驚いた表情で答えた。
「私、こうゆう集まりは苦手で」
「分かる。俺も団体行動とか苦手」
「でも楽しそうに騒いでなかったですか?」
「あー、合わしてるだけ。一応みんな友達やから。」
「一応?」
「まあ、一人でずっとはさみしいやん?だから一応友達がいる感じ」
すると唯がクスクス笑いだした。
なにがおもしろいのかわからなかったが、笑った顔があまりにも無邪気で可愛かったので思わずドキッとしてしまった。
「じゃあ、二人で逃げちゃいます?」
唯の思いがけない一言に少し驚いたが、こんなチャンスを僕が逃す訳はなく。
「お望みとあらば」
映画で聞いたようなクサイ返事を返し、僕は唯の手をとり急ぎ足で花見の席を後にした。
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