10085人が本棚に入れています
本棚に追加
「―――ねぇ、
この12時のアポイントは…?」
普段は取らない12時というアポイントで、
取り次ぐ先は滅多にない専務
「あ、さっき小川さんが席を外されてる時に
急に入ったんですよ」
「リード製薬…」
うちも小さくはないけれどリードはそれ以上で、
伺うことはあっても来てくれるなんて稀だ
言いながらその下の
『 渡瀬様 』という名前を目で追った時、
「その渡瀬さんはリード直系のお孫さんだそうで
くれぐれも丁重に、だそうです」
「―――え、そうなの?」
リードは同族経営の大手製薬会社で
そこの直系となれば将来は確約だ
この間まで目を付けていたのは
数年前に奥さんと離婚した富士製薬の副社長だけれど
久々のヒットの予感を感じた私は
一気に気分が上がり出す。
時計に目を向けると
12時まであと48分
自然と綻ぶ顔を押さえて
まだ見ぬ『渡瀬』という人の接触へ向けて
頭をくぐらせ始めた。
最初のコメントを投稿しよう!