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役員用のエレベーターが閉まると同時に、
予期していた無言が浮き上がる。
さっき念のため専務にどう応対するか確認した。
『くれぐれも、とにかく丁重に
ここにお連れするまでに
話を盛り上げれるなら盛り上げておいて』
(なにそれ これだからおじさんは…)
取りあえず来て貰ったことへのお礼を言いつつ、
にっこりと微笑む。
だけど、ぴくりともしないどころか、
寧ろ目を逸らされた。
「…………………」
――――なかなか手強い。
この雰囲気だと、
頭に描いていたアプローチをばっさりと切られたも同然だ。
笑顔を絶やさないまま、ゆっくりと前へと向き直る。
身なりはリード直系の孫なだけあるし、
それを着こなす見た目も相当だ。
( これで羽振りが良ければ間違いなく
5つ星ランク決定だけど…
でもこういう人に限って
チマチマ貯めてたりするのよね… )
持ってる癖に出し惜しみする昔の男の顔が頭をよぎった時、
ポーンという音と同時にドアが開いた。
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