プロローグ

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「ただいま」 玄関には今週頭に届いた 実家からのダンボール。 それをよけながらヒールを脱いで 誰もいない部屋に明かりをつける。 「もう送ってこなくていいのに…」 そんな言葉を毒づきながら、椅子に鞄を引っ掛けた。 実家がいやなんじゃない 高校を卒業してすぐに一人暮らしをしてもう10年。 正直田舎が恋しい時だってある。 だけど――――。 私は振り切るように首を横に振ると、 冷蔵庫からビールを取り出す。 実家からの何かを見る度に、 いつもは完璧に忘れている昔の記憶が顔を出すから。 思い出したくない顔が頭を掠める中、 私は苦い顔をしつつプルタブに手を掛けた。
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