10084人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいま」
玄関には今週頭に届いた
実家からのダンボール。
それをよけながらヒールを脱いで
誰もいない部屋に明かりをつける。
「もう送ってこなくていいのに…」
そんな言葉を毒づきながら、椅子に鞄を引っ掛けた。
実家がいやなんじゃない
高校を卒業してすぐに一人暮らしをしてもう10年。
正直田舎が恋しい時だってある。
だけど――――。
私は振り切るように首を横に振ると、
冷蔵庫からビールを取り出す。
実家からの何かを見る度に、
いつもは完璧に忘れている昔の記憶が顔を出すから。
思い出したくない顔が頭を掠める中、
私は苦い顔をしつつプルタブに手を掛けた。
最初のコメントを投稿しよう!