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『小川のことが好きなんだ
付き合ってほしい』
そんなありきたりの言葉を言われたのは、
高3も卒業間近の初春のこと。
田舎の町で始まった、
手も繋がないような淡い交際だった。
会うことなんてほとんどなかったけれど、
1か月くらい経った時、要求されたのは体で。
『小川が好きだから』
馬鹿だった私は初めての彼氏で、
好きになってくれた事が嬉しくて、
ただ身を任せた。
……だけど。
『―――――小川?
あぁ あんなブス、本気なわけないだろ
記念だよ 卒業記念ってやつ?
ああいった何にも知らなさそうな奴が
やるには手っ取り早いじゃん』
卒業式の日、
忘れ物を取りに帰った私を待っていたのは
そんな嘲笑うような会話だった。
「…ほんっと、最悪」
漏れ出た大きな独り言とともに、
汗をかいた缶ビールの底から雫が一滴落ちた。
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