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診察室は一と二に分かれている。 一診からかわいらしい女性がなんだかほっぺたを上気させながら出てきた。 今日午後の一診は霧島先生。 「大武先生、またスマイル出てんじゃない?」 「そうかも」 「面がいいっていいよねぇ」 「ほんとに…」 あたしと美紀さんは受付カウンターの下でコッソリやり取りをする。 そんな間にも何人かの患者さんが診察券をホルダーに放り込んでいく。 大武先生はハッキリ言ってカッコいい。 そして優しい。 そしてスマイルが、武器。 カッコ良くて優しい医者は、あたしの統計ではなかなかいない。 あたしは、また診察番号付きカルテを用意する。 美紀さんが顔がいいと、って言ったけど。 ホントにその通りなんだよなぁ。 あんな完璧な顔の人に、ニッコリ、しっとり、微笑まれると反対に脈上がるし。 恥ずかしくなっちゃって。 あ、でも彼女いたんだよね…。 診察室の小窓に差し入れたカルテがワゴンから落ちた音が聞こえた。 「あら」 二診からいつもの常連マダムが出てくる。
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