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混んでいた待合室も静けさを取り戻して、最後の患者さんの会計を済ませる。 「お大事にどうぞ」 お釣りと処方箋をトレーに乗せた。 どんなにやる気が無くっても やるべき事は変わらずで相変わらず笑顔をくっ付けて見送る。 診察室の中から、笑い声が聞こえてきた。 そういえば今日はバイトナースの楓ちゃんが来てるんだった。 楓ちゃんはこの病院で唯一あたしより年下の今時かわいい女の子。 綺麗な栗色のショートカットがとても似合っていて、いつも必ず右耳だけにピアスが2つ、揺れていた。 「さてと、帰りますか!」 美紀さんが日報を書き終わりそれをトントンと机の上で揃えて。 早く帰ろう。 すぐ帰ろう。 もう立ち去ろう。 一診のドアをチラリと盗み見て お疲れ様でしたー、なんて曖昧に呟きながら足早に控え室へ向かった。
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