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若先生は琥珀色の液体をスルリと喉に流し込む。 嚥下(えんげ)した時に上下に動く喉の膨らみ。 あぁ、男のひとだ…。 そんな風に思ったら 大きな手も、広い肩幅も、低い音を奏でるこの悪魔は全部男っぽい要素ばっかりだった。 あたしは運動後、しかも空きっ腹にほとんど一気に飲んだ美味しいビールのせいで、徐々にうっすら気持ちよくなっていく。 「…蜜、酔ってんの?」 「まさか。まぁアルコールはしみてますけど」 「………」 片肘をついてあたしをジッと見る若先生。 あたしも普段は絶対にしない見つめ返しにでた。 「なぁ、蜜」 ふいに若先生が口を開く。 「はい」 あたしが返事をしてすぐに。 若先生が体をグッと近づけて耳元で囁く。 「え………?」 フッと離れた後、見上げたその顔に。 眼を細めて口の端を少し上げるいつもの笑み。
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