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N大。 中山先生。 今日は過去をよく振り返るなぁ。 あの日 控え室で泣きちらかした後、憑き物が落ちたみたいによく笑うようになった。 今思えば就業中、控え室で一人泣いてたのに誰も探しに来ないし、後々も文句ひとつ言われなかった。 ひょっとするとパパ先生があちこちに根回ししてくれたのかもしれない。 あれから3年。 吉川医院で働けてホント、良かった。 「若先生、あたしもそろそろ帰ります」 残りのモヒートを流し込んで上着と鞄を掴む。 「行くぞ」 「えっ??」 帰る素振りなんて少しも見せなかったのに、いきなり立ち上がる若先生。 会計を待つ間、ダウンを着る。 あたしも同じようにジャケットを着た。 「ありがとうございましたぁ」 玲奈ちゃんは笑って手を振った。 あたしは若先生に続きながらも後ろを向いてそれに応えた。 『サンロ』を出ると、あたしのアパートは右。 駅方向は左。 「若先生、自分のくらい払います。昨日もご馳走になっちゃったし…」 あたしは鞄から財布を出す。 「じゃあ、払ってもらおうか」 そう言ってあたしの手から財布を取り上げた。 「あっ」 条件反射で取り返そうとした手は、空を切った。
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