2353人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
ニコニコと微笑む若先生にあたしは慣れてなくて。
ふいっと顔を背けていた。
「蜜」
あたしを呼ぶその声は、変わらずに低い音。
「今日は大武と何してた?」
若先生はあたしの右腕を掴み、ソファに連れて行く。
「べ、べっつに何も」
「そ?」
掴んだ右腕を更にクイッと引かれて、あたしの顔は若先生に触れそうになった。
「今度は、眼、閉じとけよ」
最後の文字を言い終わるか、終わらないかで唇を塞がれた。
「ん」
触れるだけの優しいキス。
何度も何度も重なる唇。
だけど変わらない、優しいキス。
いつの間にかまたそれに応えていたあたし。
「っ」
ほんとに優しく触れられて、食まれて。
気持ちいい。
「気持ちいい?」
ドキリ、心臓が波立つ。
心の中を言い当てられたみたい。
一瞬合った視線はまたすぐ閉じられて。
でも、次に降ってきたキスは別人かと見紛う程のものだった。
最初のコメントを投稿しよう!