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「わ、わか、せんせ」 聞こえないくらいの小さな声で呟きながら、上を向く。 長い睫毛を伏せたままの若先生があたしを抱き寄せて眠っている。 どうして人間は普段あり得ない状況になるとパニックを起こすんだろう。 あたしも例外ではなかった。 な、な、な、なぜ。 ナゼ? なーんーでー!? 落ち着こうと思えば思う程余計に分からなくなる。 じたばたと、もがき始めたあたしに居心地の悪さを感じたのか、若先生がうっすらと目を開けた。 「……おとなしくして…」 ボソッと呟いてまたすぐに目を閉じた。 いやいや、ダメですから。 もう、あたしは起きて帰りますから! 「せ、先生、あたし、もう帰ります…」 なんとか手を引き抜いて枕の下から携帯を探り当てる。 「なんじ?」 「ご、5時半です…」 「はえぇ」 そう言ったきり、一向に腕をほどく気配はなかった。 あたしは体を捩って抜け出そうと試みる。 いきなり。 体を引っ張り上げられたかと思うと、若先生の顔がすぐ目の前。 キス、されていた。
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