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「あたしと先生が?」
指であたしと先生を交互に指し変えてみる。
「ナイナイナイ!付き合わないですよ、先生何言っちゃってるんですか!」
内心、ドキドキする心臓の音に必死で知らないふりをして大きくかぶりを振った。
「あ、ナイんだ。なんか、ショック」
「大武先生も気軽にそういう事言わないで下さい。心臓、いくつあっても足りませんから!」
照れ隠しの真顔でたしなめて湯呑みに入ったお茶を飲んだ。
「まったく」
今日はどうもこのての話題が多い気がする。
勘違いするよ、あんまり言われると。
楽しい時間はあっという間に過ぎるもの、と昔から相場は決まっていて。
今日も気付けばもう10時過ぎ。
明日は休みだけど帰る事にしたあたし達。
結局大武先生にご馳走になってしまった。
「先生、ご馳走になりました。ありがとうございました」
お腹いっぱいです、とコートの上から胃のあたりを擦ってみる。
「こちらこそ。楽しかったよ」
ありがとうございました、と頭を下げる。
「送ってくよ」
大武先生はそう言ってくれたけど、それを丁重にお断りして、駅に向かった。
先生とあたしの乗る電車は反対方向。
ホームも電車を挟んで反対だった。
「じゃ、また火曜ですね、今日は楽しかったです。気をつけて」
ホームに上がる手前の階段でまた頭を下げる。
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