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最後の1冊を入力をしようとカルテに手を伸ばす。
パラパラとめくり画面に向かう。
「ん!」
なんだこりゃ。
よ、読めない…。
自慢じゃないが、英語はかなりイケるくち。
でも、これはたぶん、ドイツ語だなぁ。
どうしたもんか。
仕方なく席を立って診察室へ。
違う緊張でドキドキしながらなるべくいつもの口調で。
「若先生ー、わかりません!」
シャッとカーテンを開けると診察室には男が一人。
もちろん若先生だ。
ナースの姿は見えなかった。
内心…、えぇー、っと突っ込んでみたけどいないものはいない。
いつもだったら、直ぐに踏み出せる一歩に躊躇していると。
「なに、貸して?」
手を差し出される。
少しだけ白衣の袖が捲られていて、そこからのぞく案外筋ばった前腕にドキリと心臓が鳴った。
嫌な予感はした。
あたしだってバカじゃない。
少し近づき、カルテを手に渡そうとして腕ごと引っ張られ、体勢を崩しそうになった。
踏ん張った結果、足は急ブレーキをかけたが、体は慣性の法則で前に進もうとして、それを食い止める為に片膝を先生の太ももの上に乗せる羽目になる。
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