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「蜜、走んの?」 若先生の声にハッとして、振り返る。 「走り、ますよ。趣味ですから」 「そ?」 「吉川?」 若先生があたしの横に並んだ時、目の前の男が再び声を出す。 「あぁ、中山も来てたの」 …この二人、知り合いなんだ。 そう、今、中山と呼ばれた目の前の男。 中山治樹(ナカヤマハルキ)、N大病院の外科ドクター。 人生の中で顔も見たくない、声も聞きたくない、と、切に願って止まなかったのに。 どうしてこんなにも簡単に、スコーンと当たっちゃうかな。 中山治樹はあたしのN大時代をよく知る男、 付き合っていた男だった。
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