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「へぇ、意外。吉川は松井だと思ってた」
中山治樹はあたしと若先生を交互に見た。
「興味ねぇよ」
この会話自体どうでも良さそうですよね。
「松井にはなくても、蜜にはあるって事だ」
中山治樹はニヤリと笑う。
蜜、って呼ばないでほしい…。
手の中でペットボトルがベキッと音を立てる。
「ま、俺も松井より蜜だな」
「聞いてねぇよ」
中山治樹がアクションを起こすより前に言う。
あたしはこの時、「?」と思う。
けど、それは一瞬の事で。
「吉川と付き合ってんの?」
この言葉にあたしの思考は消されてしまう。
でも若先生の登場で幾分落ち着いたあたしはもう普通に会話できるくらいには回復していた。
「今は吉川先生のところでお世話になってます」
中山治樹に向かって言うと、首をかしげる素振りを見せた。
「吉川の?あぁ、そうなの?
でも、お前ほど――」
「中山先生とお会いするの本当にお久しぶりですね。お元気そうで」
中山治樹の言葉に被せるように出た次の文句は貼り付けたような社交辞令。
「ご家族皆様、お変わりありませんか?」
正直、自分がここまで言うなんて思わなかった。
ましてや家族の話題に触れるなんて。
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