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グラスの中で揺れるワインを凝視していたからだろうか。 眉間を揉んでから、もう一口。 「うーん」 良さが、わからん。 はは、と笑いながらグラスを置いた。 「冷蔵庫、見てこいよ」 あたしの赤ワイン拒否ってる素振りに気付いてくれたらしい若先生のセリフに、遠慮なく冷蔵庫を物色。 何人家族なんだろう、っていうくらいの沢山のドアが付いた冷蔵庫を開けて、またビックリ。 家ご飯派、というだけあってなんやらかんやらと並んでいる中から、扉側の棚に鉄板のビールを取り出してソファへ戻った。 やっぱりか、と笑われたが、ビール好きには堪らないプルトップを開けた時の空気の抜ける音、そして口の中にはホップの苦味。 あぁ、幸せ。 幸せついでにやっぱりハッキリ聞いてみよう。 「こないだの、あの挑戦的なメールは何ですか?」 そう言ってしまってから勢いをつけるようにビールを半分ほど一気に飲んだ。 「あたし、あの手のメールに振り回されたくなくて」 若先生がグラスを静かにテーブルに置く。 「切ったんだけどな」
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