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若先生は時間少し前にアパートの前に車を付けた。
待ち合わせは16:00丁度。
あたしはメールを何回か読み直しして、自分の行動に間違いがないかチェックする。
自然とにやける口許を押さえつつ、頭の中で内容を噛み砕いた。
一泊二日で温泉に行く
16時に迎えに行くから用意して
無駄な文など1文字もない、簡潔化されたメールだけど、
趣旨を伝えるのにはシンプルが一番。
クリスマスを誰かと過ごしたり
約束をしたり、もうずっと無関係な事だったから、すっかり舞い上がってるあたし。
それを見てか見ずか、この上無いイラつきをみせる若先生。
「おい、乗んのか、乗んねぇのかどっちだ」
助手席側の窓が開いて飛んできた声に少しばつが悪いながらも車に乗り込んだ。
「折原先生とはどこで?」
車を走らせてすぐにあたしは口を開いた。
「いきなりだなぁ」
若先生もそう思うぐらい前触れも何も無くて。
「若先生、こないだ家で兄の写真見ましたよね?
あれは小芝居?」
だったら手の込んだ芝居じゃない?
知り合いだったら知ってるって言えばいいじゃない。
「折原先生とはオレが研修間もない頃に会ったんだ」
だから研修医、って言ったんだ。
この時の若先生はいつもより饒舌気味だった。
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