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愛しいと
愛おしいと焦がれる
この気持ちは愛情。
例えば大武先生に憧れていたのとは違う気持ちが常にあった。
始まりは非日常的なイベントであっても、それに深く嵌まったのはあたし自身で。
避けようと思えばいくらでも避けられたのにそうはしなかった。
今あたしに触れているこのヒトにいつも助けられていたのも、あたしだ。
アイ。
なんて、言葉は使った事もなければ、他人に対して抱いた事もない心の動き。
そんな心の動きを敏感に読み取ったのか、若先生が両手であたしの顔を包んだ。
「なに」
親指で、掌で落ちる涙を拭う。
口に出してもいい?
音に乗せてもいい?
若先生があたしの頭を撫でる。
「どうした」
「――――る」
若先生の言葉と、あたしの嗚咽混じりの言葉が被って。
一度伏せた目を開けてもう一度口にした。
「愛して、る。涼せんせ……」
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