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楽しく時間は過ぎて。
すっかり忘れていた文明の利器、携帯電話。
昨日、若先生の車の中で電源を切ってからそれすらも入れてなくて。
真っ黒になったまま沈黙を守っているコレ。
鞄の内ポケットから少し姿を覗かせて然り気無く所在をアピールしていた。
「うーん」
帰り道、高速のパーキングエリアで摘まみ出してみた。
「何やってんだ」
「いえ、電源を入れようかと」
チラリとあたしを見て何も言わずにエンジンをかける若先生。
「あんまり、外泊出来なくなるかもな」
クククと笑ってアクセルを踏んだ。
笑い事じゃない。
あたしは思い切って電源を入れた。
Helloの文字が浮かび上がって、起動の準備にかかる携帯。
何やら読み込んでいるみたい。
待ち受け画面に変わって、直ぐにメールの問い合わせをしてみた。
「……」
意外にも少ない件数。
もっとしつこいかと思ってたけど。
メールが3件。
2件は電源が入っていない時にかかって来たとされる番号通知のもの。
そして次の1件。
兄があたしにメールをする事はほとんどない。
出来れば電話派だからだ。
だけど本当に久し振りの兄からのメールに腰を抜かすぐらい驚いた。
「えぇぇ~!!?」
素っ頓狂な悲鳴に相変わらずの若先生。
「うるせ」
「す、すいませ、ん」
これはどういう事だ。
想定外の驚きに、心臓がバクバクと音を立てた。
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