29/38

2477人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
どこをどうしたら 一体全体こうなったんだ。 大体、どこにそんなお金があったんだ。 お兄ちゃん、稼いでるヒトな訳? 駅前 タワーマンション 高層階 考えただけでも恐ろしい…。 エレベーターは無事に25階に到着して。 中の人をにこやかに見送るお兄ちゃん。 「気をつけて~」 ちょっと嫌味な挨拶も付け足して手を振っている。 なんて大人気ないんだろう。 このヒトもう40過ぎてるんだよね。 そう考えたらこれから先、気が滅入った。 扉が閉まる間際。 若先生の強い視線はあたしに向けられて。 唇の端が僅かに上がった。 「後でな」 低く呟いてエレベーターはさらに登って行く。 取り残された訳ではないが、なんとなーく気まずいような雰囲気漂う25階のエレベーター前。 「さ、部屋どこよ」 何事も無かったかのようにあたしは聞く。 兄の後ろ姿は何故か固まったままで。 ちょっと肩なんか震わせてるような感じにも見えたり…見えなかったり。 ゆっくり振り返ると その顔は無表情で。 「後でだぁ?」 あたしに確認するように、自分自身に聞かせるように言ったその言葉にあたしは苦笑いする。 「誰が行かせるか」 ニヤリと笑いながら呟いた兄。 ギラギラとたぎる何かを感じたのはあたしだけか。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2477人が本棚に入れています
本棚に追加