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「結局、たった一回見ただけだったけど。
アレ見てなかったらオレはここにはいないな」
大きなカルチャーショックを受けて、人が変わったように努力家になったという若先生を見てみたかった。
本人談だから、ホントかどうかは知らないけど。
でも、腕が凄いという噂もよく耳にするし、何よりパパ先生もそう言ってたし。
親バカ談?かもしれないからホントかどうかは知らないけど。
だけど、わざわざ若先生に執刀して貰いたいという患者さん達の為にまだ大学病院遠征もあるわけで、これからもそれは無くなる予定はなかった。
「そうですか。
あたしも若先生のオペに一回入ってみたかったです」
言った途端に、急ブレーキを掛けて停まった車。
べ、ベルト無かったら飛び出してましたよ!
「な、どうしたんですか!?」
後続車もクラクションを鳴らして通り過ぎてゆく。
あたし達の乗った車は静かに路肩に寄せられた。
キッというエンジンを切る音の後に若先生はこちらを向いた。
「蜜」
「は、はい」
いつになく真面目な表情の若先生。
これは大事な話かもしれない。
急ブレーキ踏むくらいだもん。
ブー、ブー、ブー
あたしの鞄から鳴り響く携帯のマナー音。
口を開きかけた若先生は、手で、どうぞ、と促した。
切れる事のないバイブレーション。
ディスプレイには数字の羅列。
「あ」
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