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「ホントに引っ越したんだ」 玄関を開けて部屋に入る、いやいや入れてもらった。 「んな事で嘘つくかよ」 「でも、昨日夕方までアパートだったから、なんか変なの」 玄関に置かれたあたしの靴、靴、靴、靴… 「どこに入れていいのか分からなかったから、後やって」 「うん」 同じマンションでも多少の違いがある。 まず広さが違う。 まぁ、若先生のお部屋はペントハウスで、フロアに5部屋ほどしかないんだよね。 あたしはとりあえず落ち着かなくて。 玄関に積まれた靴達を靴箱にしまう事にした。 「なんだ、今やんの?」 「うん、なんか落ちくかなくて」 ホントのホントにここに住むんだ。 「お兄ちゃん」 一度リビングらしき部屋に入って行った兄は玄関に顔を出す。 「ここ、住む事決まってたの?」 あたしが尋ねると兄は即答。 「当たり前だろ」 やっぱり。 そりゃそうだよね。 「ま、蜜と一緒に住む予定は無かったけどな」 笑いの混じったそれは、なんだかちょっと意味ありげな感じで。 「…あ、お兄ちゃん、ひょっとしてあたしじゃなくて他のヒトと住む予定だった!?彼女とか?」 そうだよ。 あたしってば。 「あ、あたしやっぱり出て行った方が良さそうだね」 仕舞いかけていた靴を慌てて取り出す。 「アホか。住まないよ」
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