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いつの間にか傍まで来ていたお兄ちゃん。
廊下の壁にもたれて
醸し出す雰囲気はなんだかちょっと寂しそう。
「一緒に住めればいいと思ってたけど、前にも言っただろ。
お前が嫌がるかと思ったんだよ」
「嫌じゃないよ。兄妹じゃない。変なの、お兄ちゃん」
あたしはまた靴を靴箱へ仕舞い始めた。
「それに」
コホンと白々しく咳払いを一つ。
「あの男の魔の手から蜜を守らないとな」
ワハハハ、と高らかに笑いながらまたリビングらしき部屋へと戻って行った。
「やだ、マジで面倒くさ…」
口ではそう言いながらも
なんとなく嬉しかったりするのかも。
兄と一緒に生活した記憶は殆どなくて、あたしが大学へ入学してからはめっきり会う回数も減った。
叔父さん家族にずっと面倒見てもらって、何不自由なくさせてくれてはいたけどやっぱり遠慮がちだったあたし。
本当の肉親と一緒に住めるなんて思っても無かったから、実は少し楽しみだったりする。
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