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玄関で靴を脱いで、恐る恐る家にあがる。
なんだか自分の家ではないような気がして少し怯みながら廊下を進んだ。
左手に2つ扉。
右手に1つ扉。
突き当たりはリビングへ。
その隣にまた扉が1つ。
綺麗な壁には建て付けの収納がチラホラ。
扉を開けるのは許可を得てからにして、っと。
音を立てないように心なしか柔らかい床の上を進んでいく。
リビングに続くであろう扉を開くと、あぁ、高級感漂う居室に驚いた。
オープンキッチンを含め、たぶん20畳以上はあろうかと思われる開けた眺めのリビング。
その東側は開け放てばリビングに繋がるように囲われていた。
「わぁ、すご…」
リビング一面の窓。
西側は真っ赤な夕焼け空が、東側は迫り来る宵闇。
「いいだろ。東南角部屋、南向き」
「凄いねぇ。見晴らしも凄い」
窓に近付いて眼下を眺めると、車もヒトも粒のよう。
「お兄ちゃん、お金あったんだね…」
あたしがポツリ呟くと兄は慌てたように言った。
「お前ね、オレ、結構しっかり働いてると思うよ」
「だよね。感謝してるよ。
あたしの為に物凄い働いてるの知ってたよ」
窓ガラスに張り付いたまま続ける。
「ありがと、お兄ちゃん」
ちゃんとお礼なんか言った事なくて、それでもいつもあたしの事を一番に考えてくれてたのも知ってる。
「だから、お兄ちゃんも好きな事していいからね」
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