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「おぃ、どこをどうしたら
こんな画(え)になるんだ」
そう呟くのは、
腕を組んで真新しいソファに態とらしく(わざとらしく)胡座をかいている、兄。
片や、兄の正面のこれまた真新しいソファに優雅に座る若先生。
あたしは、初オープンキッチンからこの2人の姿をご飯を作りながらチラチラと眺めていた。
引っ越して来たばかりの部屋につい1時間ほど前に現れたお客様=若先生に動揺を隠せない兄。
一応、ビールを出して和ませてみようと試みてはいるが、和んでいるのは若先生のみ。
あたしもキッチンドランカーでその戦況を見守っている最中。
「折原先生、飲まないんですか」
若先生の余所行き口調が炸裂。
缶ビールを兄のグラスに注ごうとするも兄はただ沈黙。
若先生は全く打たれる事無くそれを自分のに注いだ。
あたしはもう笑いを堪えるのが必死で必死で。
途中で何回ビールを吹き出しそうになったか数えられない。
あ、ヤバイヤバイもう、火、消さないと。
圧力鍋で根菜を仕込み中。
美味しい煮込みができる予定。
そうこうしているうちに、エビフライが揚がって、とりあえずストックお摘みと一緒にテーブルへ。
「お待たせしました」
あたしの声にやっと目を開けたお兄ちゃん。
「おー、旨そう!
ちゃんとした日本食なんて久しぶりだなー」
さっきとは打って変わった感嘆の声をあげた。
「ご飯は楽しく食べてください」
あたしのセリフに小さくはーぃ、と答えた兄は、一変、豪快に飲み始めた。
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