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しかし…。
ここはホントに旅館なんだろうか。
建物としては時を経ているように感じるんだけど、リペアも行き届いていて、しかも隅々まで綺麗。
そして、この和とオリエンタルの融合。
日本じゃないみたい。
だけどすれ違う仲居さんは日本人。
長い廊下を抜けて湯処にたどり着く。
いくつかのあるお風呂は時間ごとに男女入替え制らしく。
「えっと、女湯は」
赤い暖簾の奥の引き戸を潜るとやっぱりどこかエキゾチック。
内湯で体を洗い流して少し暖まってから露天へと出た。
冷たい空気に少し身を縮ませながらお湯に入るまでのこの逸る気持ちがなんともいえない。
「はー」
なんていい気分。
極楽、ごくらく。
お風呂の常套文句(じょうとうもんく)を心の中で唱えながらどっぷりとお湯につかる。
きっと、朝はもっと雄大な景色も堪能出来るんだろうな。
溢れ出たお湯は、闇の向こうに直接流れているように感じるくらい。
今はまだ暗闇に包まれている山々と一体感を頭の中で描いてみる。
「はぁー、幸せ」
暫くボーッとしていると4人の若い女性達が露天へと流れ込んできた。
「イケメンだったね」
「うん、マジで!」
「一人でお風呂来てたけど、まさかホントに一人じゃないよね」
「違うでしょー」
ケラケラ、キャピキャピと笑う楽しそうな声に耳を傾けつつ露天を退出した。
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