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「戻りましたー」
と、声は掛けたものの。
若先生は何やら和室の奥のダイニングで電話中みたい。
低い音が、ほぼ一定の間隔で綴られていた。
あたしは洋服をクローゼットへ。
隣には若先生のモノが既に吊ってあって。
若先生も着替えたんだ。
そう思って振り返ると若先生が通話を終えて和室に現れた。
ギャッ!
よく口に出なかったと思う。
さっき色気は駄々漏れにしないで、ってお願いしたばっかりじゃない!
…心の中で。
男の人の浴衣姿なんてお目にかかった事なんてほとんど無くて。
タイトに纏ったその姿にクラっとして、知らぬ振りをして目を背けた。
ザ・温泉セットを鞄に片付けながら呪文を詠唱。
心臓静まれ
心臓鎮まれ
シンゾウシズマレ
もぅ恐くて若先生の方へは向けない。
どんな顔してるのか知りたくても見られない。
あたし、鼻血でそう…。
そんな時、部屋の電話が響く。
若先生が受話器を取り上げて、お願いします、と話しているのが聞こえた。
たぶん、ご飯の用意だなと想像して。
とりあえず肩の力を抜いた。
今日、心臓持つかなぁ。
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