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そんな若先生は 唇の端をクッとあげて 意地悪に微笑む 「なに、蜜。誘ってんの?」 繋いだ手を更にきゅっと握り直した若先生。 あたしの心も一緒に掴まれた気がした。 だけど、部屋に着いてからは あたしに触れる事無く どちらかと言えば、放置…… ドキドキと跳ねる心臓も ズキズキと疼く体も ぜーんぶ、放置。 目の前に敷かれた二組の布団の距離がやけに近くて。 それがまた居たたまれなくて。 ありゃ。 口に出したかもしれないけど、一応心の中で呟いてみる。 だけどアルコールの程好く効いた脳ミソにはナイスな閃きなんて起こるはずもなく、独り悶々としていたところ。 ここは温泉! だと思い付いて。 再び、ザ・温泉セットを鞄から取り出した。 この中身? なんてことのない、ただのボディタオルと洗顔、化粧水に保湿液。 ありきたりの用意です。 あたしはそれを持ち出してダイニングの奥へと進んだ。 内湯とそこから続くテラスに露天風呂。 淡い光が醸し出す、独特の妖しい雰囲気に息を呑んだ。 手前の脱衣場でスルスルと浴衣を落とし、ガラスの扉を開けて内湯へと滑り込む。 奥を見れば真っ暗な闇に飲み込まれそうなところに設えて(しつらえて)ある露天風呂。 そこがあたしを誘っているかのように思えて、体もまだ温まってはいないのに早くも移動した。
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