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「2-0」
一寸の狂いもなく弁の切除と置換を成し遂げる。
縫着に使用したポリエステル糸を素早くかつ丁寧に結紮していく。
見事。
手技のレベルの高さに思わず溜め息が漏れた。
切開創を閉じて人工心肺を外す。
心臓が何事もなく動き出した瞬間漏れる安堵の空気は、現場でもブースでも同じだった。
そうか。
そうだったんだ。
慌ただしく動き出す現場とは対照的に、のんびりとした空気が流れ出す見学ブース。
「3時間か。普通よね」
山下先生の声にハッと我に返った。
大きなデジタル表示はもう後10分程で3時間を刻もうとしている。
確実に引き込まれたオペの世界。圧巻だった。
「折原、ウズウズしたでしょ?」
ウズウズというのかどうかは分からないけど。
興奮気味なのは、紅潮した顔が示す通り。
あそこはこうするだろう
ここはああするだろう
そうやって考える場面は確かにあった。
ナースという仕事が大好きなんだと改めて痛感したのも事実。
それに。
不思議に思ってた事がようやくスッキリと片付いた。
若先生が、どうしてあたしの事を知っていたのか。
オペ看時代も含めて。
若先生のオペに参加していただなんて、これっぽっちも考えなかった。
執刀医の名前を知らない器械出しなんておかしい限りだし、有り得ない。
だけど、あの頃はかなりの阻害があったりして、まさか?と思うような事で一苦労した事もあった。
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