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「実はね、折原くん」
そう切り出したパパ先生は
びっくりするような内容の話を坦々(たんたん)と続けていく。
N大時代に一時お世話になった山下加織(ヤマシタカオリ)先生。
バリバリの外科医で、山下先生が執刀する時は必ずオペに参加した。
その山下先生が今度はT大に戻ってくるという。
パパ先生は山下先生の恩師で、パパ先生があたしの事を山下先生に話した事から今回の話に発展したらしい。
「山下くんがね、貴女の事を買っていましてね。
受付なんてさせてる場合じゃないと怒られてしまいましたよ」
相変わらず、わはは、と笑う。
だからT大でオペ看を探してるって、あたしに声をかけたのか。
オペ看を探してるんじゃなくてあたしを呼んでくれてるんだと、初めて知った。
チラリと若先生を盗み見て直ぐにパパ先生に向き直る。
「折原くんの事を話すんじゃなかった、と後悔をしても今更なんですが」
そう言ったパパ先生に
後悔の「こ」の字も見当たらなくて。
「いやいや全く残念だ」
また、わはは、と笑うパパ先生に、ちょっと苦笑いを向けた。
パパ先生、ちっとも残念そうじゃないし。
しかも、もうあたしがT大に行くもんだと思ってるような言い方だし。
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