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きっと
若先生にはそんな事はお見通しで
あたしがどうなってるなんて
どうしたらこうなるかなんて
手に取るように
分かっているはず
だけど総てを支配できそうな厳しさを持ち合わせている彼は
簡単には餌を与えない。
スル、と立ち上がって
あたしに近付いて一瞬立ち止まる。
「蜜、甘いな」
首筋に顔を寄せて
頸動脈を軽く吸い上げた。
これだけで溺れてしまいそうになる。
だけど、また、何もなかったようにドアに向かって歩いて行く。
「一杯、飲みに行くぞ」
膝から崩れそうになる自分に
グッと力を入れて、支配者に付いていく。
エレベーターの中で
あたしの後ろに立ったそのヒトは
珍しくおろしていた髪の間から手を差し入れて、さっき、恐らく薄く付いたであろうマークの辺りをスルりと撫でる。
一番大きな数字が灯った箱の中は密室とはいえ、きっと視られていて
晒されている、そう考えただけであたしの温度は爆発的に上がる。
箱の緊張が解けて
外の空気が入ってきた。
首筋に這っていた掌は
そのまま肩に滑り
目的の場所までエスコートされる。
スマートな所作…。
それは一層あたしの心臓を捲し立てた。
唇の端をあげて
眼を意地悪く細めて笑う。
そうやってあたしを深みへと誘い込んでいくんだ。
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