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センターは名古屋からそう遠くないところにある近代的な建物で。 正式名がハートセンターというぐらいだから、心臓に関する粋が集まっていると言っても過言ではない。 心臓血管外科手術に於いては年間500例程の実績があるという事もあり、エキスパートが揃っている事でも有名。 若先生も月に4~5回程度大学病院で執刀している。 1日フルに使ってのオペのはず。年間で100例程は切っていると思う。 これは心臓のスペシャリストにしては少ない方だ。 大学病院専任の頃は3倍くらいの症例数だっただろう。 そんな事はさておき。 心臓第1外科の扉の前。 少し緊張の面持ち。(あたし) 若先生は普段と変わりなくドアを開けるとそれに気付いた中から聞こえた黄色い声。 「吉川先生!!」 きゃあ、きゃあと若先生の手を取って中へ進んでいく、あたしに気付かずパタリとドアが閉まった。 「…なんのコントだ?」 1人呟いた後、再度開くドア。 若いドクターらしき人が頭を下げた。 「失礼しました、どうぞ」 中にはチームが揃っていたんだと思う。 執刀医の若先生を除いて。 前立ちドクター、第1助手 麻酔医、臨床工学技士、そしてナースチーム 若先生はここでは顔馴染みらしかった。 「吉川、この子?」 さっきとは別のドクターがあたしの方を向いて若先生に尋ねた。 「あぁ、そう。見させてやって」 若先生がそう言った後に続いてあたしは簡単に挨拶をする。
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