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ドクターや技士さんには軽く挨拶を返して貰えたが、なぜかナース達には不評な感じがして。
閉め出しをくらったドアを開けてくれた第1助手の大森ドクターがオペの見学ブースに案内してくれる事になった。
「失礼します」
頭をしっかり下げて部屋を出ようとした時、後ろから掛かった低い声に呼び止められた。
「折原さん」
こんな呼ばれ方、まだ若先生が吉川医院に来たばっかりの頃以来で、なんだか変な感じがして。
はい、と言って振り返るとそこにはいつものように笑った若先生が立っていた。
「しっかり見とくように」
眼だけで押さえられてしまう
あたしの身体。
「わかりました」
ペコリと再び頭を下げて医局を出た。
ドキドキと音を立てる心臓。
幸いここは専門病院。
何かあったとしてもすぐ処置してもらえるわ。
深く息を吐いて大森ドクターの後を付いていく。
「ナースの態度、すいませんでした。」
「え?」
「無作法だったでしょう」
「あ、特に気にはしていません」
「そうですか。なんせ、吉川先生は人気があって…」
はあ、と曖昧な相槌を返していると、
「吉川先生は特にあまり女性と一緒のところはお見かけしてませんでしたので、皆ビックリしたんだと思います」
「そうですか」
「私も、先程折原さんに笑いかけていらっしゃるところを見て実際鳥肌立ちました」
あはは、と笑いながらそんな事を言った後。
「あ、内緒にしといて下さい」
そう付け足してまた笑った。
なるほど、センターにもよく来ていたんだな、とここで分かった。
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