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「なんて顔してんのよ」 「いえ、お兄ちゃんと同期だなんて…」 「なによ、オバサンだって言いたいの??」 「い、いや、その逆で、そんなに歳だったなんて…」 言い方が悪かったのか、山下先生は、あ"?、と言ってこちらを睨んだ。 話題を変えるように慌てて山下先生に話を振った。 「ところで、先生は何故センターに?」 あぁ、と一呼吸置いた山下先生。 「吉川君がオペする患者、あたしの担当なのよね。 元はN大に来たんだけど、地元が名古屋の方でね」 そう言って、後は濁してしまった形になった。 「そうですか、」 と、頷いてはみたものの、これは何か表に出してはいけない事情の様なものが見え隠れ。 あまり突っ込まない方がいいな、とあたしも察する。 「あ、じゃあ、山下先生もオペに?」 「まさか、吉川君にお任せよ。 ポートアクセスだから、彼の得意分野ね」 ポート、アクセス…。 ポートアクセス手術は心臓外科手術の一種で、手術時間も短く、さらに術後の退院も早いとされている術式。 だけど、視野が狭くて技術的難易度が高く熟練した心外科医でないと難しい事。 若先生、得意分野なんだ… なんだかそこが少し引っ掛かった。 思い起こせば、この術式で度肝を抜く程の凄いドクターがいた事を思い出したからだ。
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