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N大を辞める直前くらいに担当した器械出し。 同じくポートアクセス手術の4時間所要をその半分の2時間ちょっとで終わらせたドクター。 「山下先生、確かあたしがN大を辞める直前に、弁置換のオペに代行立てた事ありましたよね?」 あたしが突然聞いたからか、山下先生は曖昧な返事。 「……、そうだった、かしら?」 山下先生にしては歯切れの悪い、パッとしない言い様だった。 覚えていないのかと思いそれ以上は突っ込まなかったが。 当たり前だ。 年間何百という手術をこなすドクターだもん。 4年も前の、ピンポイントの事なんてバッチリ覚えてる訳がない。 本当に術野が狭くて、殆どを執刀医の手技に頼るしかなくて。 今までの様な心外(しんげ)のオペでは考えられないくらいの少しの傷跡。 だから一歩間違えれば大変な事になるんだけど。 「あ、そろそろ、移動しようか」 山下先生の声で弾かれる様に顔を上げて頷いた。 この時は、ただ見学とはいえど、久しぶりに実際のオペを目の当たりに出来る事に興奮に近いモノを覚えていた。 ワクワクする ドキドキする この事だけが頭の中を占めていた。
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