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「吉川君もちゃんと人間らしいじゃない。安心したわ」
アハハハと豪快に笑う山下先生にあたしも釣られて笑ってしまう。
「で、折原はこの後どういう予定?」
一頻り(ひとしきり)笑った後、尋ねられた予定に、何も無い事に気付いたあたしはその通りに告げる。
「夜は多分、食事会があると思うから。折原も出るでしょ?」
「え?」
だから2泊なのか…。
「吉川君はもうお役ごめんだし、この後はあたしが診て、ここのドクターに引き継ぐだけだから」
「そうなんですか」
「そ、よくある事よね」
「ですね」
わざわざ、名古屋にまで来て
若先生を執刀医に持ってこさせた患者さんに少し興味はあったけど、やっぱりそれなりに何か事情があったんだろうなぁ、なんて思っていた。
「じゃあ、折原、また後でね」
山下先生があたしの肩をポン、と叩いてブースから出て行った。
ポツンと残されたあたしは、まだ残った数人を眺めながら首から提げたIDカードの事を思い出して、席を立ち上がった。
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