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館内の掲示板で第一外科医局の場所を確認して、先刻通って来た道を引き返す。 やっぱり歩く事数分、見た事のある廊下と、点在するドア。 そのひとつずつを確認して、一外のドアの前に辿り着いた。 首に提がったカードを外す。 さっきの大森先生を思い出して、ぶるぶるっ、と身震いを一つしてからドアをノックした。 「はい」 さっきした身震いは何かの前兆だったのか中から聞こえた声は大森先生らしきもの。 執刀医と前立ちのドクターは家族に説明があったり何だったりと、まだ帰ってきていないのは分かっていたが、まさか大森先生は戻ってきてたなんて…。 「失礼します」 そう言ってドアを開けると中にはやっぱり術着のままの大森先生がいて、書類を持ってこちらに向かってきた。 「あぁ、折原さん」 「お疲れ様でした」 「如何でしたか?」 「とても引き込まれました」 フ、と笑った切れ長の目は細められて。 「それはよかったです」 「はい、あ、これをお返しに」 あたしは紐を巻き付けたカードを大森先生に手渡した。 「わざわざすいません」 受け取ったカードを顔の前まで持ち上げる。 「いえ、ありがとうございました」 ペコリと頭を下げて踵を返す 「そういえば折原さんは優秀なナースでいらっしゃるとか」 踏み出す足が止まる。 一体誰がそんな事を言ったのか。 顔が引き攣りそうになるのを堪えて振り向いた。
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