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『もう暫くかかる』 若先生からそう連絡が来たのは6時を回った頃だった。 と、同時に7時から食事に行く事も示唆される。 あたしは駅前のスタバに居るようにとの指示も受けた。 はるばる東京から名古屋まで来て、手ぶらで帰すわけにはいかないんだ。 一体どんな患者さんを切ったんだろう…。 色々思案するところはあるけれど、この際どうでもいいや。 そう思う事にして、指令通りに駅前のスタバに滑り込んだ。 寒い時期だというのにアイスキャラメルマキアートを頼んで、席につく。 一口啜ると、底に沈んだキャラメルシロップの甘さが体に染み透る。 「はー」 お腹すいた。 空腹時はやっぱり少し糖分を採りたい。 そして、今日は頭を使ったから尚更だなぁ。 と、さっきのオペを軽く振り返ってみる。 凄い、オペだったなぁ。 今日のように出来るだけ皮膚を小さく切り、骨も切らないか、切っても一部。 そんな治りも早く、社会復帰も早いようなオペはとにかく視野が狭い。 大々的に広げてもなかなか弁の形成や置換は難しいドクターも多いなか、あんなに素早く、綺麗にやり遂げてしまうなんて……。 どこかのテレビの心臓外科医みたいじゃない。 しかも、前よりも、もっと凄かった。
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