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「……なんで、なんで
分からなかったんだろう」
しかも、4年も………。
次に飲み込んだキャラメルマキアートは苦味がキツイもので。
あまりの苦味に顔をしかめる。
それはあたしの心の中が顔に出てしまったようだった。
「気付かなかった……フリはできないなぁ」
「何がですか」
バッ、と大きな音がするほど全力で振り向くと
そこにはまたまたあのヒトが飄々と立っていた。
驚きのあまり、声も出なくて、しかもここで大声は良くなくて、口を閉じたまま、目を大きく見開いて今の感情を伝える。
「独り言、癖なんですか」
そう言ってクスリと笑った切れ長の目。
「お、大森先生、どうしてここに」
「吉川先生はまだ患者さんに付き添っていらっしゃいます。
少し遅れるご様子ですので、ここにいる貴方を迎えに行ってほしいと頼まれました」
「あ……」
そうですか。
と、言いたかった。
だけど中途半端に終わってしまった言葉。
「これ、キズではないですね」
あたしの頸動脈を人差し指で撫でながらそう言った。
「恐らく共犯は―――
吉川先生」
波打つ心臓。
このヒト、物凄く苦手だ。
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