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目覚めた時にはもう外は夜の暗さだった。
明かりのない部屋で起き上がる。
暗闇に目が慣れていて、うっすらと浮かび上がる部屋の様子に首を傾げた。
鼻から入る感覚は
明らかに自分の家では無いことが明白。
「ここ、どこ」
窓とは反対の方へ進みドアノブに手を掛けてそれを回した。
キィ、という少しの金属の擦れた音と共に開いたところから微かな暖色系の灯りが射し込んで、その先に人の気配。
そのまま進んで行くと
見覚えのある横顔が、テーブルに広げられた紙の束とパソコンに交互に向けられていた。
「ま、松本さん」
規則正しい視線があたしに向く事は無くて。
「やっと、起きたね。
酔っ払い娘」
「あ、ここ、松本さんのお家ですか?」
「ここは、まぁ、セカンドハウスみたいなもんだよ。
本当はS区に住んでる。」
「はあ」
そこで初めて顔をこちらに向けて立ち上がった。
「なんか、飲む?」
「あ、じゃあ水を…」
「ソファ、座って」
綺麗な指が指された方は簡単なソファセット。
言われた通りに腰かけて違和感を覚える。
気付いた時には松本さんがあたしの頬っぺたにペットボトルをピタリとくっ付けた。
それを受け取りながら、頭をペコんと下げて違和感を口にする。
「テレビ、無いんですね」
「あぁ、テレビ、そんなの要らないよ。
ここ、スルだけの部屋だから」
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