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「んとに、世話のやける酔っ払いだよね!」 だいたい、どうしてあたしがここにいるかってことすら理解できておらず。 松本さんは呆然とするあたしの手から携帯をパッと引き抜いて何やら操作しだす。 そして耳にあてたかと思うとすぐに話しはじめた。 「夜分遅くに失礼します。 松本と申します、はい、…」 何やら暫く話してようやく通話を切った。 あたしの身の安全と今までの経緯をお話してくれてた様子で。 ポイと携帯をあたしの手元に放り投げて慌ててキャッチする。 「お兄さん、迎えに来てくれるってさ」 あぁ面倒くさ、と呟きながらまたテーブルに戻っていた。 「まつもとさぁん…」 ちょっと安堵したのと 少しの不安が なんとも情けないあたしを醸し出していく。 「なに? ちゃんと話しといてあげたから! 拾ってくるんじゃなかった、ホント面倒くさい!」 そうしてものの10分と経たないうちにインターホンが鳴り響き 開いたドアの先に少し疲れた表情の兄が立っていた。 兄は何度も松本さんに頭を下げてからあたしの手を引いて歩き出す。 帰り際、松本さんが、またね、とあたしに声をかけた。 また、はあるんだろうか。 無言で車に乗せられて。 って、車、あったっけ? この無言が嫌だったのもあったけど。 まず言わなきゃいけない。 「ごめんなさい、お兄ちゃん」 あたしがポツリと呟く。 シートベルトを閉めて ブレーキが切られて車は走り出した。 「今度からは気をつけろよ」 そう言ったお兄ちゃんの寂しそうな横顔にあたしは罪悪感で覆われていた。
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